■ 干渉SAR時系列解析による変位速度の見方

色と変位速度の関係

干渉SAR時系列解析結果(画像)は,色により変位速度(解析期間における1年あたりの平均的な変位量)を表しています(図1)。
色の変化は,図1の通り全ての画像で共通で,赤色に近いほど衛星に近づく変位速度が大きいこと,青色に近いほど衛星から遠ざかる変位速度が大きいことを示します。

しかし,各色がどのくらいの変位速度を表しているのかは,画像によって異なっています(図1の例では,最大の変位量が±3 p/年)。色と変位速度の大きさの関係は,カラーバーを確認してください。

地理院地図では,「選択中の地図」の一覧にある表示中の画像の情報ボタン(図2の赤枠)をクリックすることで,カラーバーが表示されます。

図1. カラーバーと変位速度の関係
図2. 地理院地図でのカラーバーの表示

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衛星に近づく/衛星に遠ざかる変動とは

干渉SAR時系列解析による変位速度は,衛星に近づく方向か衛星から遠ざかる方向の変位を示しています。そのため,1つの画像からは地表が沈降したのか,水平に動いたのかを知ることはできません。
図3(a)に示すように,地表が隆起した場合でも,地表が衛星側に向かって水平に動いた場合でも,衛星と地表の距離が短くなるので,観測される変位はいずれも衛星に近づく変動(赤色)となります。
逆に,地表が沈降した場合でも,地表が衛星と反対側に向かって水平に動いた場合でも,衛星と地表の距離が長くなるので,衛星から遠ざかる変動(青色)となります(図3(b))。
図3. 変位速度と地表の動きの模式図((a)衛星に近づく変動、(b)衛星から遠ざかる変動)
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観測条件と変動方向

SAR衛星は,南から北に向かう北行軌道から観測する場合と北から南に向かう南行軌道から観測を行う2通りの場合があります。
国土地理院で実施している干渉SAR時系列解析では,電波の照射方向が衛星の進行方向に対し右側の観測を用いているので,北行軌道では西側から,南行軌道では東側から観測することになります(図4)。

図4. 衛星進行方向と電波照射方向
干渉SARで観測される変位量が衛星に近づく方向か遠ざかる方向のため,北行軌道か南行軌道の観測により,変位速度が表わす方向が異なります(下表)。

表. 観測条件と変動方向
衛星進行方向
電波照射方向
衛星に近づく
(黄〜赤)
衛星から遠ざかる
(シアン〜青)
北行軌道
右側照射

隆起,
西向き
沈降,
東向き
南行軌道
右側照射

隆起,
東向き
沈降,
西向き

隆起や沈降の上下の地表の動きは,北行軌道か南行軌道であるかにかかわらず,同じ向き(隆起の場合は,衛星に近づく方向,沈降の場合は,衛星から遠ざかる方向)の変位として観測されます(図5(a))。
一方,東西方向の地表の動きは,北行軌道か南行軌道であるかで,逆向き(西向きの変動の場合は,北行軌道では衛星に近づく方向に対し,南行軌道では衛星から遠ざかる方向)の変位として観測されます(図5(b))。

このように、画像を見る際には衛星進行方向と電波照射方向に注意が必要です。地理院地図では,「選択中の地図」の一覧にある表示中の画像の情報ボタンをクリックすることで,衛星の進行方向を確認できます。

図5. 観測条件と変動方向の模式図((a)地表が隆起した場合、(b)地表が西向きに動いた場合)
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 最終更新日:2021-7-30
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