■ SAR干渉画像の見方

地表の動きと色の変化

干渉SARの結果は,地表の動きを色の変化で表現します.地表の動きが緩やかな場合には色が緩やかに変化しますが,急激に変化する場合には色が急激に変化します.

観測条件とカラーバー

SAR干渉画像の観測条件は,衛星進行方向(北行軌道 Ascending/南行軌道 Descending)と電波照射方向(右向き Right/左向き Left)の組み合わせにより,観測地域を西側から観測する場合と,東側から観測する場合に分かれます.


だいち2号ではAR,DL、DR、ALの4通りの観測条件があり、だいちでは電波照射方向が右向きのみのため,観測条件はARとDRの2通りです。

人工衛星の観測条件
観測条件略号
軌道方向
電波照射方向
カラーバー
AR
北行軌道
arrow: Ascending Right

西から東に照射
DL
南行軌道
arrow: Descending Left
DR
南行軌道
arrow: Descending Right

東から西に照射
AL
北行軌道
arrow: Ascending Left


カラーバーの数値は,衛星から地表までの視線方向の距離の変化量を示します。

符号がマイナス(−)の場合:衛星と地表の距離が短縮
符号が プラス(+)の場合:衛星と地表の距離が伸張

観測条件と変動方向

観測条件 色の変化 地表面の変動方向
AR
arrow: Ascending Right

DL
arrow: Descending Left
沈下、東向き
隆起、西向き
DR
arrow: Descending Right

AL
arrow: Ascending Left
沈下、西向き
隆起、東向き

上図の例では、
図中@は、断層に近づくにつれ、色が青→緑→黄→橙→赤→紫→青(繰り返し)と変化していますので、衛星に近づく変動
図中Aは、断層に近づくにつれ、色が青→紫→赤→橙→黄→緑→青(繰り返し)と変化していますので、衛星から遠ざかる変動
を示します。


同じ色の場所は,SAR電波の波長の半分の長さ(約12cm)の整数倍(0,1,2・・・)のいずれかの変動量の差をもっています.
つまり虹色が1周して元の色に戻ると,ちょうど約12cmの変動量の差が生じます.

SAR干渉画像が含む誤差

SAR干渉画像には,さまざまな誤差が含まれるので,注意が必要です.代表的な誤差の一つに,大気遅延誤差があります.

下の図の左及び中央の干渉画像はほぼ同じ期間のものですが,色が大きく異なります.中央の干渉画像の期間を含む左の干渉画像でほぼ色の変化が見られないことから,この期間には実際は大きな変動はなく,中央の干渉画像の色の変化は大気遅延誤差によるものであることが疑われます.そこで,中央の干渉画像の観測日時における雨雲のようす(右)を確認すると,色が変化しているのとほぼ同様の場所に雨雲があったことがわかります.

大気遅延誤差はランダムに表れるので,異なる干渉画像で同じ位置に色の変化が見られないものは大気遅延誤差である可能性が高いです.逆に,異なる干渉画像で同じ位置に色の変化が見られるものは,実際の変動である可能性が高いです.

このように,複数の画像を見比べることで,色の変化が大気遅延誤差によるものであるかを推測できることがあります.


 
 最終更新日:2017-12-05